びっしりと赤い実を付けて縁起物として重宝される木です。メギ科ナンテン属の常緑低木で古くに中国から帰化したとされる在来種で茨城以西の本州、四国、九州、中国、インドに分布しています。
ナンテンの特徴
葉
樹高2~3m、樹皮は灰褐色で縦に溝があります。葉は幹の先端に集まって互生に付き3出羽状複葉で小葉は幅1~2.5cm、長さ3~7cmの広披針形。先は尖り全縁でやや光沢のある革質、葉柄は鞘状になって茎を抱きます。
葉裏です。紅葉します。
花
花期は6~7月、大きな円錐花序を出し花径5~6mmの白色の花を多数つけます。蕾は角ばった円錐形。小さな外花被片3枚ずつを輪状に多数つけ、大きな内花被片2セットが花弁状になります。花が開くと萼片は剥がれ落ちます。雄しべは5本、花糸は短く黄色い葯が縦に裂けます。中央の黄白色の子房が膨らんでいます。柱頭が赤くなっていきます。
果実
11月、果実が赤く色付きます。先端に柱頭が付いています。果実は6~7mmの球形の液果で中には5mmの中央が凹んだ半球形の淡褐色の種子が2個入っています。鳥たちが庭に沢山種子を落としてあちこちから芽が出てきます。
縁起物の南天とその効用
縁起物
中国では赤い実を表して南天燭、株の姿から南天竹と呼ばれています。別名、成天。難を転じるとして、また赤い実に厄除けの力があるとしてまた火災除けとして庭木として植えられ、福寿草と合わせたり、南天と水仙の絵を天仙図として飾ったりと縁起物として扱われてきました。家紋にも使われています。
効能と毒
お赤飯の中には南天の葉は必ず入っていました。ナンジニンという成分が葉に含まれていて南天の葉を入れて熱いうちに蓋をすれば解毒作用があるチアン水素が微量に発生し、腐敗防止になると科学的に証明されているそうです。また、下の部分を押して水を出す手水(ちょうず)が昔はトイレ近くの軒先につるされていましたが、南天手水といってこの水がない時に南天の葉で手を洗うということを聞いたことがあります。これはベルベリンというアルカロイドが抗菌作用があるからだそうです。実家には玄関先とトイレの前に南天がありました。他にも生葉を揉んで汁を付けると蜂に刺された時の痛み止めになるそうです。漢方の南天葉は健胃、解熱、鎮痛の生薬です。果実を乾燥させたものは南天実と呼ばれる生薬です。鎮咳作用や抗アレルギー薬として利用されているそうです。薬と毒は使いようで全株に毒が含まれています。
品種
キンシナンテン(金糸南天)ー葉が糸のように細い。成長が遅く樹高は低い。江戸時代末期に生まれた葉変わりの古典園芸品種。これから沢山の園芸品種が作られている
シロミナンテン(白南天)ー樹高1~2m。果実が黄白色、紅葉しない。
オタフクナンテン(お多福南天)ー樹高20~40cm。葉が円く葉色が紅、橙黄色の色が混じる矮性種。秋には紅葉する。グランドカバーに使われる。果実はできない。霜にも病害虫にも強い。別名オカメナンテン。
育て方
半日陰の水はけのよい場所が適しています。西日は嫌いますがあまり日の当たらない場所では徒長し実の付きが悪くなります。耐寒性耐暑性ともあります。庭植えでは水やりの必要はありません。植え付けは2~3月、剪定は2~3月、前年度に実を付けた枝(3年ほどは実を付けない)、枯れ枝や古い枝、弱々しい枝、込み合った枝を根元から切り取ります。肥料はあまり必要ありません。
増やし方
種蒔き、挿し木、とり木。種は11月に果実の果肉部分を取り除いて蒔きます。春播き(3、4月)の場合は乾燥させないように注意して冷蔵庫などで保存します。果肉には発芽抑制成分が含まれています。花が咲くまで4年ほどかかります。挿し木は3月、9月。2~3か月ほどで発根します。
病害虫
モザイク病(葉が縮れてモザイク模様になる)すす病(カイガラムシの排せつ物に集まる菌が原因)。カイガラムシやハマキムシが付くことがあります。取り除きます。
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