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ハマウツボ科~ヤセウツボ(痩靫) 

にょきっと立つ不思議な植物です。

ヤセウツボ

寄生植物のヤセウツボ

  • ハマウツボ科ハマウツボ属の寄生植物
  • 分布 本州、四国
  • 地中海沿岸原産
  • 渡来 1937年に千葉県で確認、牧草に紛れて渡来
  • 草丈 15~40cm
  • 花期 4~5月
  • 名前の由来 ヤセーハマウツボより細い ウツボー弓矢を入れる筒状の靫に花の形が似る
  • 学名 豆の一種+絞め殺す+より小さい、
  • 要注意外来生物

茎 葉

ヤセウツボ

茎は紫褐色で全体に短い腺毛があります。分岐しません。葉は褐色で互生、長さ6~20mmの鱗片状、披針形で先端は尖り無柄で茎をだきます。

ヤセウツボ

ヤセウツボの根茎

ヤセウツボ

10~30cmの長い穂状に沢山の花が螺旋状に付き、下から咲き上ります。花の基部には幅0.5cm、長さ1cmほどの細い卵形の1枚の苞が付きます。花の両脇に1cm前後の長さの異なる2枚の萼があります。萼は先端が線状で基部まで深く切れ込み長い腺毛があります。

 螺旋状に下から咲きあがるヤセウツボ(痩靫)の花

長さ12~15mmの唇状花。淡黄色で紫色の条や斑紋があります。上唇は先が凹み、下唇は3裂、中央が大きく縁が波型に切れ込んでいます。内側は無毛、外側には腺毛があります。雌しべ1本、花頭は大きく2裂し赤紫色で半球形です。雄しべは4本。長短2本づつ、花糸は白色、葯は黒色、花粉は白色。

果実

ヤセウツボ(痩靫)の蒴果

0.7~1cmの蒴果、熟すと2裂して微小の黒色の1000個以上の種を散布します。果実は動物の胃の中でも生き、風雨、動物、人間によって運ばれます。

寄生植物

寄生植物は依存の度合いが異なります。
絶対全寄生植物 幼光合成の能力を失って寄生主がないと生存できない ネナシカヅラ ヤセウツボ ナンバンギセル
絶対半寄生植物 光合成は自身で行う ヤドリギ
条件的半寄生植物 光合成能力があり独立して生きられるが宿主が近くにあれば寄生する シオガマギク コシオガマ

ヤセウツボは葉緑素を持ちません。マメ科、セリ科、キク科などの根に寄生して養分や水分を吸い取る全寄生です。寄生する植物によって草丈も変わるようです。全寄生植物のほとんどは根と花以外は退化し葉は鱗片状のものが多いようです。半寄生植物では葉の退化はあまり見られず自分でも光合成をし、奇生主から根や茎から養分を吸収しますが外観からはそれが寄生植物だとわからないものも多いようです。

アルツハイマー病との関係

ちょっと不気味な雰囲気も持つヤセウツボですが、筑波大学の研究グループによって、この寄生植物からアルツハイマー病の原因物質といわれている「アミロイドベータ」の凝集を抑制する物質「フェニルエタノイド配糖体」が見つかったそうです。

現在、アルツハイマー病はこのアミロイドベータが脳内に蓄積されておこると考えられていて毒性を持つ上に活性酸素を発生させて周りの組織を殺してしまうそうです。その活性酸素の発生も抑える効果も確認できたとか。沢山の人が救われることでしょう。

葉緑素(クロロフィル)や赤青紫の色素(アントシアニン)は紫外線をカットする効果がありDNAへの損傷から身を守る効果があるそうですが、それを持たないヤセウツボは代わりになる物質を手に入れたのでしょうか。

自然界にはたくさんの不思議と恵みがあって興味も尽きませんし有難いことです。

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