仏炎苞に包まれた、面白い、少し不気味な花が付き、秋から冬にかけて真っ赤な実をびっしりと付ける摩訶不思議な植物達です。雄株から雌株に転換したり、また受粉方法にもサスペンスが!
ムサシアブミ
サトイモ科テンナンショウ属の多年草
分布 関東以西、四国、九州、朝鮮、中国、台湾の海岸に近い林
在来種
草丈 20~50cm
花期 3~5月
果期 1~12月
全草有毒
葉
地面からにょきっとタケノコのようなものが出ています。地下には扁球形の塊茎がありコルク質を除いた部分が民間療法に使われ、この生薬名が天南星(テンナンショウ)で属名の由来です。
塊茎から多数の葉鞘が重なって筒状になり茎のように見える偽茎を出し、その先に葉柄が付きます。
折りたたまれた縞々の葉が出現。
葉は2個、光沢のある大きな小葉が3個ある3出複葉です。葉柄は15~30cm、幅4~10cm、長さ5~30cmの菱状広卵形で先が尖り全縁。
花
葉柄の間から葉より短い3~10cmの花柄を出し先端が尖った仏炎苞に包まれた約3cmの肉穂花序を付けます。
仏炎苞は淡緑色や暗紫色と白の縞模様でお洒落。舷部(花弁の下部が細く先端が幅広い場合の広い部分)は暗紫色で袋状に巻き込みます。巻き込んだ先端の縁は巻き込んだ後垂れ下がります。口辺部は耳状に張り出しています。
肉穂花序には白い棍棒状の付属体があります。
仏炎苞から付属体がむき出しになっていました。
付属体の下に緑色の雌花がびっしりと付いています。
受粉の仕組み
雌雄異株です。塊茎の栄養状態で雌雄が決まります。キノコに似た臭いを発してキノコバエを呼びます。雄花の仏炎苞の中に誘導されたハエは花粉を体に付けて仏炎苞の下部に空いた穴から外に出ることが出来ます。仏炎苞の内側はつるつるしていて入った虫は上からは出られません。雌花には出口がなく出口を探して内部を飛び回り受粉の役目を果たしますが、死んでいきます。
果実
雌花は花が終わると仏炎苞が枯れ落ち、びっしりと並んだ果実が出現します。
果実は1.5cmほどの液果、熟して真っ赤になりました。中には種子が数個入っています。
重すぎて地面に横たわっています。
ウラシマソウ
サトイモ科テンナンショウ属の多年草
分布 北海道南西部から九州のやや湿った林床
日本固有種
草丈 40~50cm
花期 4~5月
果期 9~10月
全草有毒
葉
3月の若い開き始めたみずみずしい葉です。
鳥足状複葉を1本根生します。葉柄は40~50cmで太く、茎のように見えます。先端は2つに分岐し分岐点に11~17枚の小葉を付けます。小葉は長さ10~20cmの長楕円形で先端が尖ります。
葉の質は薄く光沢があります。晩夏には枯れ始め秋には落葉します。地中の球茎は小球を付け栄養繁殖します。
花
雌雄異株。成長すると雄株から雌株に性転換します。虫媒花。葉柄の基部から紫褐色の仏炎苞に包まれた肉穂花序を出します。外側には不明瞭、内側には明瞭な白い筋が入ります。筒部は淡紫褐色。
舷部の上部は黒紫色、広卵形で先端が下垂します。肉穂花序の上部の付属体がウラシマソウの特徴で名の由来になっています。50~70cm暗紫色の紐状で仏炎苞から飛び出し上に伸びてから垂れ下がります。
虫の出入り口
キノコバエによる虫媒花です。雄株の虫の脱出口です。
果実
トウモロコシ状の果実は緑色から赤色に熟します。中には数個の種子が入ります。自然教育園では果実は見つけられませんでした。