小さくて緑色が鮮やかで綺麗なチャバネアオカメムシ。果樹園を襲うカメムシの中でも一番の厄介者だとは知りませんでした。今年はチャバネアオカメムシやクサギカメムシ、コガネムシ、カナブンなどが桃の実に止まっているのをよく目にしました。そろそろ桃の収穫の時期ですが、残念ながら食害にあってしまいました。
チャバネアオカメムシの特徴
カメムシ目カメムシ亜目カメムシ科カメムシ亜科。東アジア、日本全土に分布しています。体長10~12mm。刺激を与えると臭い匂いを出すので、「へこきむし」「へっぴりむし」などと呼ばれます。
鮮やかな緑色で、前翅が茶色で名前はここから付きました。複眼は茶色。秋には全体が茶色のものや前翅の背後のふちが茶色のものが出現します。
生態
- 11月、集団で落葉の中で越冬します。
- 4月、餌を探して活動をはじめます。
- 6月下旬 産卵します。
- 幼虫はしばらく集団でとどまり、種子を食べて育ちます。
- 7月下旬、成虫になります。2世代目が産卵し、成長が早いともう1世代重ねることもあります。
卵は葉の上に数十個、並べてくっつけます。幼虫は蓋を押し上げて出てきます。
幼虫は最初は黒っぽく齢を重ねると緑色になっていきます。
自然教育園のミズタマソウにいた幼虫です。
チャバネアオカメムシと人工林の関係
豊作→産卵回数の増加→翌年の大発生
果樹園の周りには針葉樹の人工林があります。6月にはスギ、ヒノキなど、球果内の種子が熟し餌が豊富になります。晩秋までこれが続くので産卵を重ねられます。豊作の時には成長が早く産卵の回数も増えます。結果、スギやヒノキの雄花が豊富な翌年のチャバネアオカメムシの大発生に繫がります。
大発生→餌の不足→果樹園の被害
これらのえさが不足すると果樹園に飛来し果樹が被害を受けることになります。サクラ、キリ、クワ、ウメ、モモ、ナシ、カキ、ビワ、ブドウなど。
若芽は萎縮し、幼果の時に吸汁されると落果するか奇形果になります。収穫前に吸汁されるとえくぼができます。吸汁されても落果しなかった実は皮と実がくっつき上手く剥けません。組織が破壊されスポンジの様になったり硬く縮んでしまいます。
遺伝子の記憶
カメムシは幼虫の時に種の中の胚乳や子葉の栄養がないと育ちません。果樹からいくら吸汁しても卵巣が発達せず子孫が残せません。果肉が肥大した今の果物では口針が種子まで届かないからです。適したエサでないのにやってくるのは何故でしょう。遺伝子の中に組み込まれた野生種の頃の記憶があってやってくるのでしょうか。
集合フェロモン
チャバネアオカメムシは集合フェロモンを出します。次々と集まってきてしまうので見かけたらすぐ行動に移す必要があるようですね。今までは被害をあまり感じていなかったのでのんびり観察していました。この集合フェロモンを合成して防除の試みがされているそうです。
スギやヒノキは花粉症だけでなく、チャバネアオカメムシの生育と果樹園の皆さんのご苦労と深く関わりがあるのですね。