小さくて緑色が鮮やかで綺麗なチャバネアオカメムシ。果樹園を襲うカメムシの中でも一番の厄介者だとは知りませんでした。今年はチャバネアオカメムシやクサギカメムシ、コガネムシ、カナブンなどが桃の実に止まっているのをよく目にしました。そろそろ桃の収穫の時期ですが、残念ながら食害にあってしまいました。
チャバネアオカメムシ
- カメムシ目カメムシ亜目カメムシ科カメムシ亜科
- 分布 東アジア、日本全土
- 体長10~12mm
- 出現期 4~10月
- 不完全変態
- 越冬 成虫
- 別名 へこきむし、へっぴりむし
鮮やかな緑色で、前翅が茶色で名前はここから付きました。
頭部は三角形、基部には茶色い複眼があります。胸部は広く肩部は円く尖ります。口器は針状で腹部に折りたたまれています。
秋には全体が茶色のものや前翅の背後のふちが茶色のものが出現します。
生態
- 11月、集団で落葉の中で越冬します。
- 4月、餌を探して活動をはじめます。
- 6月下旬 産卵します。
- 幼虫はしばらく集団でとどまり、種子を食べて育ちます。
- 7月下旬、成虫になります。2世代目が産卵し、成長が早いともう1世代重ねることもあります。
卵
卵は葉の上に並べてくっつけます。幼虫が蓋を押し上げて出てきています。
幼虫
脱皮したばかりの幼虫もいます。
幼虫は最初は黒っぽく齢を重ねると緑色になっていきます。
胸部背から翅にかけて同色、中央の赤い部分は範囲が狭いのが特徴です。腹部を除いて黒色になる個体や、全体が黒化する個体もいます。
チャバネアオカメムシと人工林の関係
豊作→産卵回数の増加→翌年の大発生
果樹園の周りには針葉樹の人工林があります。6月にはスギ、ヒノキなど、球果内の種子が熟し餌が豊富になります。晩秋までこれが続くので産卵を重ねられます。豊作の時には成長が早く産卵の回数も増えます。結果、スギやヒノキの雄花が豊富な翌年のチャバネアオカメムシの大発生に繫がります。
大発生→餌の不足→果樹園の被害
これらのえさが不足すると果樹園に飛来し果樹が被害を受けることになります。サクラ、キリ、クワ、ウメ、モモ、ナシ、カキ、ビワ、ブドウなど。
若芽は萎縮し、幼果の時に吸汁されると落果するか奇形果になります。収穫前に吸汁されるとえくぼができます。吸汁されても落果しなかった実は皮と実がくっつき上手く剥けません。組織が破壊されスポンジの様になったり硬く縮んでしまいます。
遺伝子の記憶
カメムシは幼虫の時に種の中の胚乳や子葉の栄養がないと育ちません。果樹からいくら吸汁しても卵巣が発達せず子孫が残せません。果肉が肥大した今の果物では口針が種子まで届かないからです。適したエサでないのにやってくるのは何故でしょう。遺伝子の中に組み込まれた野生種の頃の記憶があってやってくるのでしょうか。
集合フェロモン
チャバネアオカメムシは集合フェロモンを出します。次々と集まってきてしまうので見かけたらすぐ行動に移す必要があるようですね。今までは被害をあまり感じていなかったのでのんびり観察していました。この集合フェロモンを合成して防除の試みがされているそうです。
スギやヒノキは花粉症だけでなく、チャバネアオカメムシの生育と果樹園の皆さんのご苦労と深く関わりがあるのですね。