世界中に自生し、道端などに普通にみられるカタバミは沢山の名前で呼ばれています。一方の葉が欠けているように見えるので片喰(かたばみ)、茎や葉が酸っぱいので酢漿草(かたばみ)。仏具などを磨くのに使っていたことから鏡草(かがみぐさ)、その他、すいば、しょっぱぐさ、すずめぐさ、ねこあし。中国では三葉酸草、老鴨嘴、酸味草、満点星。カタバミはヤマトシジミの食卓です。
カタバミの特徴
カタバミ科カタバミ属の多年草、草丈10~30cm、球根を持ち大根のような根でしっかりと土をつかみ匍匐茎を伸ばして地表に広がっていきます。茎と葉柄の継ぎ目に下からへら状の托葉が出ます。葉は根生し、茎には下向きの毛があります。長い葉柄の先に長さ1cmの先端が凹んだ倒心形の3出複葉を付けます。小葉の縁、裏面に毛が散在します。昼間は開き、夜には葉裏を外側に閉じます。葉色は明るい緑色、緑紫色もあります。
花期5~7月、葉腋に花径8mmの数個の黄色い5弁花を付けます。萼は5枚、雄しべは内側に5本の長い雄しべと外側の短い5本の雄しべがあります。長い雄しべと同じ位の長さの花柱は5本有ります。花糸や花柱にはいぼのある毛が生えています。花も太陽があれば開き、曇ると閉じます。
長さ2~2.5cmの先が尖った円柱形の蒴果で細かな毛が生えています。果実は5室に分かれていて未熟な種は白く透明な外種皮に包まれています。熟すと5裂して外に出た種子は半透明の皮が反転し暗褐色の種を音を立てて弾き飛ばします。1mも。種子は先が尖った広楕円形で長さ1.5mm、横皴があります。アリ散布植物と呼ばれ、先端に付いた乳白色のエライオソームがアリの餌として巣に運ばれエライオソームが食べられた後の種は巣の外に運ばれカタバミは離れたところに芽を出すことができます。
ウスアカカタバミ
アカカタバミとカタバミの雑種ともいわれカタバミに含まれることもあるようです。草丈10~20cm、カタバミより花も葉も小型で葉色は緑色のものから暗紫色、濃紅色のものまで様々。花期は5~9月、花はやや赤みがかり、中央部に赤い輪のような斑紋が入ります。茎にも葉にも果実にもt短毛が密生しています。
中央の赤い斑紋はみられない花もありました。円柱形の蒴果ができます。
オオキバナカタバミ
南アフリカ原産、明治中期に観賞用として渡来しましたが要注意外来生物に指定されています。草丈30cm、茎はなく葉は鱗茎から根生し葉柄3~10cmやや光沢がありほぼ無毛、紫褐色の斑点があり他のカタバミと区別できます。花期4~9cm。15~30cmの長い花茎の先端に3cmの黄色い花を数個付けます。5枚の薄緑色の萼や花茎には細い腺毛があります。花弁には脈が目立ちません。葯は黄橙色。果実はほとんど付けず鱗茎ではびこります。
英名バターカップ・オキザリス。オキザリス・ペスカプラエと呼ばれることもあります。
イモカタバミ
南アメリカ原産で観賞用として20世紀半ばに渡来しました。草丈30cm、鱗茎から長い葉柄を出して倒心形の3出複葉を付けます。葉裏には短毛があり基部には黄色い腺点があります。花期は4~6月、9~12月、夏には地上部は枯れて休眠します。葉腋から葉より長い花柄を出して15mmの黄色い葯の濃紅色の花を数個付けます。花筒の部分は色が濃く、濃紅色の筋が入ります。ピンク色、白色の花もあります。萼の先には橙色の小さな点が2つあります。花粉は出しますが根茎で増えるようです。
ムラサキカタバミ
南アメリカ原産で江戸時代末期に観賞用に日本に渡来しましたが、今では関東以西に蔓延していて要注意外来生物に指定されています。草丈30cm、鱗茎から長い葉柄を出して倒心形の3出複葉を付けます。葉裏には毛があり、基部には黄色い腺点があります。
花期は5~7月、葉より長い花茎を出して2cmのピンクの花を数個付けます。萼は5枚、5枚の花弁の花筒奥は淡黄緑色、花弁の先端に向かって濃紅色の筋が入ります。葯の色は白色で花粉は出ません。淡緑色の花柱は5本、外側に曲がります。
雄しべが花弁化した八重咲のようになったムラサキカタバミを見つけました。ムラサキカタバミは種ではなく基部に付く鱗茎で増えます。
牽引痕
親の鱗茎が太ると地上に露出します。そこで一旦鱗茎の真下の根が太くなってそれが縮むことで根茎を地下に引き戻します。この時根は横縞がはいります。この根のことを牽引根といいます。古い鱗茎の上部に新しい鱗茎ができ、新しい鱗茎を古い鱗茎のあった位置に置く為のシステムです。この時新しい鱗茎が飛び散ります。オキザリスやムラサキカタバミが増殖するシステムです。ユリ、リンドウ、アヤメ、グラジオラスやニンジン、イチゴなどでも起こります。
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