葉の隈取はなかなか趣があります。少し薄暗いところに映えます。
クマザサの特徴
イネ科ササ属。自生種は京都の山地のみで原産地は不明、他は栽培種だそうです。クマザサとは、白い縁取りのあるクマザサ(隈笹)のことであり、大型のササの総称でもあり、美味しいネマガリタケとも呼ばれるチシマザサのことを指して熊笹と呼ばれることもあります。チシマザサには白い縁取りがありません。
丈夫で2mにもなる細長い地下茎が10本ほど密生して長く生きます。稈(中空の茎)は1~1.5m、良く茂ります。5~6月に柔らかい艶のある緑色の新芽が出ます。葉は幅4~5cm、長さ20~25cmの長楕円形で先は尖ります。
稈鞘(かんしょう)は節の長さの1 /2から2/3の長さで、長い開出毛が密生しています。葉には耳があり葉縁に毛が見えます。肩毛が放射状に開出します。
枝は1節に1個ずつ疎らに出、先に5~7枚の葉を互生に付けます。11~12月、導管から養水分が届かなくなり先端と葉の縁が白く枯れます。これが隈笹の名の由来です。よく似たチュウゴクザサよりクマザサの縁取りがはっきりしていて綺麗です。
綺麗な緑だった葉にこんな模様が現れました。タケスゴモリハダニの仕業です。葉脈に侵入して葉の繊維を食べます。卵は0.1mm、成虫0.5mm、4~10月に出現します。
葉裏には糸で編んだ巣があります。薬剤は聞かないので葉を切り取るしかありません。
飛騨の国ではクマザサの実は野麦と呼ばれ、凶作の年には団子にして食されていたとか。飛騨と信濃を結ぶ峠の名前、野麦峠はクマザサが群生していたことから付けられた名前だそうです。
一斉開花
夏にまれに円錐状に数個から十数個の紫を帯びた緑色の花を付けます。風媒花で6本の雄しべをぶら下げてイネ科らしい花。ササはクローナル植物で地下茎を通して栄養や情報をやり取りしていて繁殖能力が高い植物です。花を付ける時には山全体一斉にということもあるほど広範囲に及ぶことが多いようです。一斉に花を付けた後は株全体が枯れることが多くその回復には長い年月が必要になります。ササが消えると光が当たり今まで生えることのできなかった植物のチャンスが到来し、植物環境が変わります。それでも地下茎が残りなかなか新しい生態系にはなりえないようで、厄介な植物に変わりはないようです。同一の種子から育った個体が別々の場所で同時期に花を咲かせた事例があるそうで遺伝子に書き込まれているのでしょうか。ササの開花などのサイクルは私たちの寿命ほどの長さで起こることでまだまだ分かっていない謎の多い植物なのですね。
ササ
ササの名は風に吹かれて擦れる音から名付けられたという説とササダケ(細小竹)の略だという説があります。学名も「sasa」が使われています。ササの命名者は牧野博士と柴田博士。
稈は筆、竹細工、製紙の原料に。葉は防腐作用があり、ちまきや菓子を包んだり生魚に添えるなど、とても身近で清々しさも感じられて欠かせないものです。漢方薬の原料、お茶や健康食品にも。観賞用としても傾斜地の土留めにも使われます。家紋もありますね。
ササとタケ
ササとタケの違いは何でしょう。
ササは日本の土着種が多く、タケは中国からの渡来種が多い。
ササは燗を包む鞘が剥がれず枯れるまで残るが、タケは最初は鞘に包まれるがやがて基部から剥がれる。
ササの葉脈は平行、タケは格子状
ササは寒冷地でも育つがタケは育たない。北海道でのタケノコ狩りは根曲がり竹(チシマザサ)だそうです。
ササは小型、タケは大型が一般的ですが、中には8mにもなるメタケはササ、2m以下のオカメザサはタケです。