ナス
ナス科の植物は主にアンデス地方が原産です。
最初は白かったナス
原種は白いナスで、インドでみられる野生種は丸形や卵型です。英語ではエッグプラント。ドイツ語ではアイエル・アプフェル(卵型リンゴ)。ヨーロッパに伝わったのは13世紀のことで、苦みがあって美味しくなかったことから 主に園芸種として栽培され、白、黄緑明るい紫、縞模様などカラフルなナスが沢山あります。赤ナスと呼ばれる観賞用のナスはミニトマトそっくり、真っ赤な実です。ちなみに17世紀にトマトが日本に渡来した時は「唐なすび」と呼ばれていました。日本では「赤なす」はトマトのことです。
日本には180種、世界では1000種と、形も色も様々です。日本のような温帯地方では一年草ですが、熱帯地方では多年草です。
日本で愛されたナス
ナスはインド東部が起源と言われ、ビルマ、中国を経て、日本に奈良時代に渡来しました。奈良時代には、多くの記述が残っています。粕漬けの奈須比(なすび)が高官への進物品に使われていたそうです。
室町時代には京都近辺、江戸時代には静岡県で促成栽培されていました。「一富士二鷹三茄子」の言葉は、高いものを並べて、富士山、愛鷹山(あしたかやま)、初物の値段の高いナス という説もあります。江戸も後期になると人気の野菜になっていきました。越後には観賞用の流れをくむシロナスがあって、お盆の牛はこの白ナスを使うそうです。白いのはアスニンがないためで、防御のため皮が固くなりますが 、なかはとろとろ。
各地のナス
折り戸ナス
一富士二鷹三茄子のナス、家康に愛されたナスと言われています。生産効率が悪く100年途絶えていたこの伝説の将軍様のナスが21世紀に復活、温暖で日照時間の長い三保の特産の丸ナスです。味が濃く実がしっかりした美味しいナスだそうです。
民田ナス
山形の一口サイズの丸ナスで辛子漬けに加工されます。草丈も花も葉も大きいのに実は小さい変わったナスです。
「めずらしや 山をいで羽の 初茄子」 松尾芭蕉が民田ナスを食べた時の句です。
吉川ナス
一度も品種改良されることなく継承されてきた福井の黒紫色の丸ナスで、農水省から地域のブランドとして保護する食品に認定されました。直径10センチほどで煮崩れしにくい味の濃いナスだそうです。
賀茂ナス
原種に近く葉や茎ヘタにも痛そうな立派なとげがあります。型崩れしにくいので揚げ物や田楽、しぎ焼きに。
作業がしやすいように改良されて茎や葉にはとげのないナスが多いですが、ヘタのとげはまだ健在ですね。
育て方
「親の意見となすびの花には千に一つのあだもない」 昔親からよく言われた言葉です。実際には何割かは落花しますが、雌雄同果で、よく着果します。
最初の花が付いたら、その下の脇芽を摘んで、3本仕立てにします。株が疲れないように小さめで収穫します。収穫したら、2節残して切り戻し、新しい脇芽を伸ばします。
株の状態を表すサイン
ナスの花は下向きに咲きます。おしべの先端にしか花粉がなく雌しべとくっついて自家受粉するからです。雌しべが雄しべより長く出ていないと実が付きません。株の状態が良くないサインです。また花が落ちたり実が付かないときは日照不足、水不足、肥料不足、肥料過多、お疲れのサインです。花を太陽から遮っている葉を摘み取る葉かきをしたり、不要な枝を落として花や株の内側まで日が当たるようにします。
株が疲てくるので、思い切って太い枝を半分に細い枝は落として、周りにスコップを入れて根切りをします。新しい根が出てきます。1か月もすれば、秋の美味しい実が付きます。
ナスは低温が苦手、冷蔵庫に入れっぱなしにすると、ボケナスになってしまします。
ナスの健康効果
90パーセント以上が水分のナス、微量ですが、ビタミン、ミネラルをバランスよく含み、健康効果が期待できます。
- 水分が多いことから、体を冷やし夏バテ解消、便秘解消に。
- カリウム・水分バランスを整え、高血圧を予防し、筋肉の活動を助けます。
- 食物繊維・生活習慣病の予防と便秘解消に。
- 鉄・貧血予防に。
- コリン・血管の柔軟性を保ち強くします。動脈硬化の予防に。
- ナスニン・ポリフェノールの一種。抗酸化作用により活性酸素を除去し、悪玉コレステロールをを減らし動脈硬化を予防し、眼精疲労を改善します。抗がん効果は広く認められています。ナスニンは金属と融合すると安定するので漬物の時に鉄と一緒にすると良い色になります。
民間療法・ヘタの黒焼きは歯痛、口内炎などの炎症をしずめ、すりおろしてしぼった汁を塗るといぼに効くといわれています。
喘息の人や咳が出える人は食べすぎると悪化する可能性があります。