ユリの原種は100種以上あります。ユリ属は次の亜属に分類されます。
原種
カノコユリ亜属
カノコユリ・タケシマユリ・クルマユリ・オニユリ・コオニユリ・ヒメユリ・イトハユリ、外側に丸まった釣鐘状の花を下向きにつけます。
カノコユリ
九州四国に分布する日本原産種です。名の由来は紅色の斑点が鹿の子絞りに似ていることから。草丈150cm。葉は長さ20cmの細い楕円形。茎頂で分岐して10輪以上の花を下向きに付けます。花径10cm。遅咲き種です。江戸時代にシーボルトが球根を持ち帰りカサブランカの交配親になりました。
シロカノコユリは紅色の斑点がなく白い突起があり薄緑色の筋があります。
オニユリ
食用として中国から日本にやってきました。北海道と沖縄以外に自生します。7月頃、褐色の斑点のあるオレンジ色の花が咲きます。芳香はありません。
ムカゴが沢山つきます。
ヤマユリ亜属
ヤマユリ・ハカタユリ・ササユリ・タモトユリ・オトメユリ・カノコユ
ヤマユリ
本州原産の日本固有種。花は20cmほどの大輪で、白色に黄色の筋が入り、赤褐色の細かな斑点があります。強い香りがあります。茎は斜めに伸び120~200cm、交配に重要な原種で、豪華な花を咲かせる数々のハイブリッド種が作られています。
サクユリ
タメトモユリとも呼ばれ伊豆半島に自生するヤマユリの変種で世界最大のユリです。ヤマユリよりも香りも強く葉が肉厚で幅が広く花径が30cmと大きくヤマユリのような赤褐色の斑点がありません。カサブランカの交配親です。
ササユリ
伊豆半島以西の本州、四国、九州の産地の斜面などの明るくて強い日差しの当たらない場所に自生する日本固有種です。花は淡いピンクで、花粉は赤褐色、下向きに咲きます。葉は名前の通り笹のような比較的大きな長楕円形です。強い香りがあります。育てるのが難しいようです。
テッポウユリ亜属
テッポウユリ・タカサゴユリ・リーガルリリー
テッポウユリ
屋久島や琉球諸島に自生します。主にアジアに分布します。花は4~6輪、純白でラッパ状に花先が反り返り、やや下向きに咲きます。
タカサゴユリ
台湾原産で、やせた土地でも育ち繁殖力が強く、種からでもすぐ花を付けます。花は先端が大きく開いたラッパ状で外側に薄い紫色の線が入り、細い葉を持つほっそりとした姿です。
テッポウユリと掛け合わせたシンテッポウユリは切り花として人気です。
スカシユリ亜属
スカシユリ・エゾスカシユリ
スカシユリ
中部以北の海岸の岩場や砂地に自生します。イワユリやハマユリともいわれます。花弁は重ならず、付け根部分が細くなっていて少し開いていることからスカシユリの名が付きました。オレンジ色や黄色の鮮やかな色で沢山の斑点があり、上向きに咲きます。日光が大好きです。
いつもは花が終わると子房から摘み取りますが今年はそのままにしてみました。
中にはこんなにたくさんの種が入っていました。枯れあがった直立した茎の上に先端に付き縦に3室に分かれていて裂けますが、側面にはネットのように筋があって、種の出口は上部にしかありません。種には翼があり風に乗って飛んでいきます。
交配種
オリエンタル系(オリエンタルハイブリッド)
ヤマユリサクユリカノコユリなど日本原産のユリから交配されました。大輪で芳香があり、花色は白、赤、ピンク黄色など。花は横向きなたは下向きに付きます。近年は上向きのものも作られました。
カサブランカ
1970年オランダで生まれたカサブランカ。ヤマユリとカノコユリを原種にもつオリエンタルハイブリッドリリーです。欧米で品種改良が盛んになったのは、江戸時代、シーボルトによって日本のユリが紹介されたことに始まります。花期は6月~8月。
カサブランカは白い家の意味です。
イエローカサブランカ
草丈は1~2m。20cmを超える大輪で横向きに四方に花が付きます。花弁は艶があり縁が波打つように尖がって成長とともに大きく反り返ります。花期6~8月。
葯は縦に下方から上方に裂け目が広がっていきます。上下の先端まで裂けめが広がると内部が露出します。
花糸は先端だけつながっていてかすかな刺激だけでゆらゆらと動きます。
小さな突起が沢山あります。
上から見ると・・・葉は披針形、艶があり肉厚です。互生に付きます。
スカシユリ系(アジアティックハイブリッド)
スカシユリ、オニユリ、イワトユリなどのアジア原産のユリから交配されました。中輪で芳香はなく、草丈は小型ですが花色が豊富で上向きの花を咲かせます。
その他
テッポウユリ系・トランペット系(中国原産のユリ)・アメリカン系・欧州系など
ユリの育て方
一般的に地上部に日が当たっても、球根は乾燥に弱いので下草がある場所が適しています。西日は苦手です。オリエンタル系は明るい半日蔭、アジアンティック系は日光がよくあたるところが好きです。
植えつけ
10月~11月。植えつけるときには深めに。下根は茎を支え、球根の上に張る上根は水分と養分を吸収する大切な役割があります。カサブランカなどは茎が弱いので支柱が必要です。
花後
花がらと雌しべの子房の部分を手で摘み取ります。切り花にするときは球根のために、下半分残します。枯れるまで切らずにそのまま。
鉢植え
毎年植え替えます。地植えの場合も数年ごとに植え替えます。球根は表皮がなく乾燥しやすいので保存する場合は、湿らしたおがくずやピートモスと一緒に空気穴をあけたビニールに入れ、冷暗所で保存します。
増やし方
鱗片差し(鱗片をはがして砂にさし発芽させる)、木子(球根の上部にできる木子を外して植える)花が咲くまで2,3年かかります。
ユリ根
ユリの球根はほとんどがあくが強く苦くて食べられません。食用に適するものはオニユリ、コオニユリ、ヤマユリ、カノコユリです。ユリ根として販売されているのは殆どが北海道産のコオニユリです。ただし園芸用のものは防腐処理が施されているので食べるのは危険です。またテッポウユリ系のものは猫に害があるとの報告もあります。
収穫後2,3か月後、でんぷんが糖分に変化して美味しくなるそうです。
ユリ根は上品で可愛くて、ほくほくして美味しいですね。